2014年4月11日金曜日

不動産コラム第3回 - 2014年以降の暮らしとは? これからの住まい観を考える。


アベノミクスによる景気回復傾向、住宅取得に関わる税制優遇、消費税や相続税増税の決定など、さまざまな要因が重なり活況を見せた昨年の住宅市場。少しでもお得に良質な家を手に入れたいと願う消費者心理が刺激される一年だったと思います。
では2014年、今年の住まいをめぐる環境はどのようになるでしょうか?昨年の動向や、住宅・不動産関連各社から年末にリリースされたキーワードをもとに、これからの住まい方を考えてみました。

リタイアしても社会とつながりを持ちたい。

いよいよ本格的な大量リタイアが始まる団塊世代の動きが再び注目を集めています。以前のリタイア層といえば、のんびり老後を楽しむというイメージがありましたが、現在の60代はまだまだ元気で現役バリバリ。実際、団塊世代の方は「シニア」という言葉を自分のこととは思いにくいでしょうし、団塊世代をご両親に持つ方もまた、ご両親に老後、隠居という言葉はまだ早いと感じていると思います。

新しいシニア像を形成しつつある団塊世代は、住まい観にも変化が現れています。これまでは現役時代にローンで購入した住まいに永住する傾向が強かったのですが、今は元気なうちに終の棲家として都心のマンションを選択したり、コミュニティを重視した新たな街に移住したり、子どもの独立に合わせて早々とリフォームをするなど、住まい方も多様化する傾向が見られます。

そのような団塊世代の方たちの住まい観を表す新しい言葉が昨年末、リクルートホールディングスの住まい情報サイト・情報誌『SUUMO』より発表されました。その名も『縁居』。発表によると、これまで主流だった「隠居」という暮らし方から、「新たな縁を創る」スタイルへと変化しているということ。
特徴としては、これまで築いた縁というよりも、地域やコミュニティなどに新しい縁を創る意識が強いことなのだとか。というのも、これまでのシニア層が老後の生活において重視したのは「資産・貯蓄」「レジャー・余暇生活」だったのに対して、団塊世代は「自己啓発・能力向上」「住生活」を重視したいという声がグンッと伸びており、確かに「隠居」という言葉から想像する生活よりずっと積極的かつ向上心に溢れている印象。そんななかで、定年後の暮らしを見据え、新しい縁を創って張り合いを持って生きていこうというわけなのです。

実際に団塊世代の方たちと話していて感じるのは、社会とつながる装置であった「会社」から離れたあと、そうした装置がなくなることは思いのほか辛いことであり、恐怖に近い感覚すらあるということ。趣味でも学びの場でも地域でも、何か社会とつながる装置があり、人に求められること、役割があるということは、健康や安全、経済力と同じくらい大事なことになっているのです。

「経済合理性だけ」から、「自分の個性も」の時代へ。

何かと「損か得か」と経済合理性を主軸に語られがちな住宅市況。確かに1000万円単位の金額が動く人生最大級の買い物ですから、損得に敏感になるのは当然です。しかしながら、経済合理性が必ずしも自分の生活の質と比例しているとは限らないのもまた事実。人気のある沿線駅やエリアにあり、「資産価値が落ちにくい」と言われる家がどの家族のライフスタイルにも合うとは限らないのです。

2014年以降の暮らしとは? これからの住まい観を考える。

当然といえば当然のことですが、「できれば得したい」という人間の心理に加え、比較的同質性を好む国民性もあってか、これまでは「人が良しとするものを良し」とする傾向が強かったと思います。しかしながら、若い世代を中心に「人がどう思うかより自分にとっていいモノ」という価値観でモノを選ぶ人が増えるなかで、住まい選びの基準にも広がりが出てきています。

代表的なのが、第一回目でも触れた中古住宅のリノベーションという手法。経済的に合理性があると判断するケースももちろんですが、同じくらい、お仕着せの新築物件では物足りない、画一的な家はイヤという価値観から選択する人が多いのです。大きな買い物ですから決して経済合理性という観点がなくなるわけではありませんが、それも考慮しつつ自分らしさ、個性を大切にする住まい選びが始まりつつある昨今。昨年に比べて経済的要因に振り回されなくていいぶん、今年は少し落ち着いて自分のしたい生活、自分ができる生活、家族のこれからを今一度、紐解いて考える良い年になるかもしれません。

今年こそ挑戦したいDIY!

この1、2年、若い世代を中心に広がりを見せているDIY。これは言わずと知れた「Do It Yourself」の略。日本では昔から日曜大工として親しまれてきて取り立てて目新しいものではないのですが、DIYの範囲が広がっていること、そして「DIY女子」なる言葉が生まれるなど、若い女性たちの間に広がっていることがひとつの特徴です。

なぜDIYが広がっているかといえば、ひとつには、前項の話につながる「自分らしさ」の表現のひとつではないでしょうか。団塊ジュニアあたりからあとの世代は、物質的に満たされた暮らしをしてきた世代であり、モノがあることより、そのモノ自体がどんなモノなのか、どんな価値があるのか、どんなストーリーがあるのかに重きを置く世代。すでにファッションや車への欲求を超え、暮らしそのものへの意識と知識が高まり、その結果が住まいのDIYへ繋がっていると考えられます。

もうひとつ、その背景としては道具や建材の進化も強力なサポートになっているといえるでしょう。インターネットでDIYを検索してみると、自分で壁紙を貼ったり、塗装剤を塗ったり、フローリングや設備機器の面材を貼り替えたり、「こんなことができるんだ!」と驚きのアイテムがたくさん出てきます。「家の中のことはプロに任せるのは当然」という感覚はすでに過去のもの。もちろんプロの仕事ほどうまくできないとは思いますが、そこも「個性」のひとつであり、「味」と言われる魅力に変わってしまうのがDIYの楽しさ。自分で手をかけたプロセスがあるからこそ愛着を感じ、人に見てもらいたいと思い、だからもっと家に手をかけるという好循環を生むのです。

もちろん、水まわりの設備など専門技術が必要な場所はプロに相談するなど注意も必要ですが、一度、人に褒められたりするとやめられなくなりそうなDIY。インターネットはもちろん、ホームセンターも充実しているので、ぜひ自分の手で家に手を入れていくDIY生活、今年こそスタートしてみませんか? 住まいに対する意識、知識が変わっていくと思います。

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荒井 直子(あらい なおこ)
フリーライター/編集者
1972年東京都生まれ。1996年から株式会社リクルートにて不動産広告の制作に携わる。2003年に独立しフリーランスに。
『都心に住む』『HOUSING』『Goodリフォーム』などの住宅情報誌のほか、専門誌、一般誌、女性誌などの住宅・インテリア関連、ディベロパーやハウスメーカーの会報誌やカタログなど、住宅・不動産・建築・インテリアを中心に取材・執筆を行っている。
スポーツ関連、書籍の編集も少々。